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ゆるい時代.(後) [考察・ひとりごと]

初代ストIIがゲーセンに初登場したのは1991年。自分が中学生の頃だ。
開発時期はそこから最低1年くらいは遡るだろう。当時、ネットはまるでなく、マニアの世界でパソコン通信が細々と存在していた頃。情報というのは今にくらべてほんっとうに少なかった。

今だったら、何かを作ろうとしたら資料は山ほど得られる。深い理解はできないまでも、たくさんの資料を目に通せば何がありえて何がありえないかの目星はつく。
おかげで、「すごくヘン」なものは姿を消した。ひとつのものを創るにあたり、スキル不足や煮詰めの甘さからくる「ちょっとヘン」や、「けっこうヘン」は今でも見かける。「ヘン」というより「ダメ」なものと言ったほうが正しいかも知れない。
ここでいう「ヘン」というのは、独創的ということだ。「ダメ」と違うのは、現実にはありえないようなものでありながら、何か一本スジが通っているところ。情報が少なかったからこそ、想像で補う。その想像の結果としての創造が、斜め上へどころからせんを描いてあさっての方向へ伸びてゆく。それが面白い。

本田には、その「すごくヘン」がいっぱいある。
「相撲=相手を転ばせる」という連想からか、本田にはダウン技が異様に多い。N~S本田までの話になるけど、ダウンする通常技が小K・中K・大K・下大K・下大Pの計5種もある。
ダウン技の変った例では、下中KでダウンをとれるDJ、斜め下大Pでダウンのブランカ、ゲームは違うけど下大Pでダウンのヴァンパイアハンターのオルバス、J中Pでダウンのフォボス、立ち大K(スライディング)でダウンのサムスピの橘右京などがある。
けれど立ち小Kでダウンするキャラというのは、世に2D格ゲー多けれど本田以外に見たことがない。今見ても本田はじっつに特異なキャラだと思う。そんな本田が好きでたまらない。


リュウだって結構ヘンだ。中・大Pのストレートは直立不動で腰が入ってないし、ジャブが肘なんて格闘技は見聞きした事がない。胴着を着ているのだから空手か柔道がベースと思われるけれど、あんな突き蹴りは合気道、日本拳法、骨法にもない。こういう面白い技を数えていてはキリがない。
要するに、テキトーに想像して作ったということだ。これは単に資料不足という訳でもない。時代が4年ほどさかのぼる初代ストリートファイターは、典拠となる格闘技がはっきりしているためどのキャラも比較的リアルなモーションをしている。
また、エックスで追加されたケンの蹴り技3種(一文字蹴り、鎌払い蹴り、稲妻かかと落し)は、K-1ブームの影響がみられ、ワリと現実的なモーションになっている。

ひと昔、ふた昔前の創作物は、ほんとうに色々ゆるかった。
アニメの作中における服装などでも、今じゃ設定どおりにビシーッと揃っているのが当たり前。昔は話ごと、いなシーンごとに服装や装備が違うのはなんにも珍しくなかった。ゲームの世界でも、他社のゲームキャラやマンガのキャラがロコツに出てくるなんてことも少なくなかった。

物事の枠組みがカッチリしているのが当たり前になった今の時代、ストIIのようなゲームはもう作れないだろう。
ヴァンパイアやストIIIではキャラはアニメ塗りになった。ああした半リアルなドット絵の塗りは、数年前からロストテクノロジーになっていると聞いたことがある。カプコン社内で2Dは古くさいとバカにされ、3Dが過剰にもてはやされた時期があったそうだ。
単純な技術の継承の面でも、また発想の自由さでも、ストIIは90年代にのみ成立し得たゲームなのだと思う。

ストIIはいい。その良さを懐かしむのではなく、今なお現役でバリバリ遊べる。大会も盛んに開かれているし、動画も多数アップしてくれる人がいる。こういうの、とてもよいものだ。
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